NPO法人「人と人をつなぐ会」は8月上旬をめどに、東京・戸山団地で「見守りケータイサービス」を本格的に開始する。月額1050円の低価格で、高齢者でも操作が簡単な携帯電話を貸し出し、各種相談を受け付けたり、見守り支援サービスを提供したりすることで、社会問題化している「孤独死」の防止を目指す。「IT(情報技術)なしに孤独死は防げない」と語る孤独死対策の専門家で同会の本庄有由会長に聞いた。
―なぜ戸山団地は孤独死が多いのか。
約15年前に自治会がなくなり、地域コミュニティーがなくなったためだ。孤独死はコミュニティーの喪失とともに発生する。
戸山団地は、周辺地域から移り住んできた高齢者が多いため、同世代でも話題が合わず、コミュニティーが形成しづらいという特徴がある。それでも、戸山団地の一区画ごとで小さなコミュニティーができるよう取り組んできたが、温度差はある。ある区画では孤独死がなく、コミュニティー活動も活発だが、別の区画ではまた孤独死が発生し、4月に死後2か月たった遺体が発見された。
―なぜコミュニティーに温度差があるのか。
その孤独死があった区画は1年前まで、われわれの仲間が見守り活動をしていた。その間は近隣同士の交流もあったが、彼が亡くなって1年もたたずに孤独死を出してしまった。やはり、コミュニティーを活性化させるキーマンの存在が必要だ。
一方、そういうキーマンがいても、コミュニティーに参加しない人はいる。特に、高学歴だったり、立派な経歴を持ったりする男性の高齢者にそういう人は多く、コミュニティー活動以外の対策も必要だ。
―具体的な有効策は何か。
自宅に設置した機器のボタン一つで、オペレーターが電話でさまざまな相談を受け付けたり、行政サービスの利用申請を代行するシステムを提供している。最近では、生き死ににかかわるような“重い相談”については僧侶が相談に応じるなど、サービス内容を拡大していて、着実に孤独死の減少に貢献している。4、5年前には、約1100世帯の戸山団地で年間10件以上の孤独死があったが、昨年は総世帯数が倍増したにもかかわらず、孤独死は半減した。
6月12日からは、このシステムを携帯電話ベースで行うためのモニターテストを開始する。携帯電話であれば、自宅から離れた時の安否確認もできる。電源を入れるだけで安否確認メールを親族などに送信できる機能も加えた。ボタン一つの使いやすさを残しつつ、利用者の費用負担を大幅に減らした。テスト結果を踏まえ、8月上旬をめどに、まずは戸山団地で普及し、将来的には全国の孤独死に悩む地域にも広めていきたいと考えている。
ある程度ITに頼らないと、孤独死を防ぐことはできない。民生委員も高齢化していて活動範囲に限りがあるし、高齢者の一人暮らしは急激に増加している。高齢者は携帯電話などのITを活用することに抵抗があったり、使いこなせなかったりするという見方があるかもしれないが、全くそんなことはない。むしろ、既に世の中は携帯電話が当たり前にある世界になってしまっており、どんな高齢者でも使いこなせたら手放せなくなる。
こうしたサービス提供者と利用者の双方でIT活用が進めば、国や自治体、それに地域の資源も生かした福祉サービスの質と量は、飛躍的に向上し、拡大するだろう。
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